ただいま、日本。

ただいま、日本。

悲しかったり、寂しかったり、深い青のような、感情が好きだ。

それはすこしネガティブなものを想起させるのかもしれない。だけど同時に儚く、とても美しいものであると、ぼくは思う。

たとえば。

飲み会でみんなと別れてひとりになった帰り道に感じる気持ちだったり、ふと最寄駅からひとつ手前の駅で歩きたくなったときの感情のことだ。

いまの気持ちは、すこしそれにちかい。

 


 

スリランカの空港までタクシーで向かう道のり、沈んだ夕日を追いかけるように深い青が空を包む。サーっと音が聞こえてきそうな心地よい雨が降るハイウェイ。

ドライバーの声がやさしく響く。

「スリランカは楽しかったかい?」

そんな彼のひとことをきっかけに、これまでの旅のワンシーンが頭を巡る。すこし嫌なことがあったかと思えば、素敵な出会いが上書きされていく。

「もうちょっといたかったな」

名残惜しい気持ちが募り、思わず心の声が漏れる。

ちょっぴり寂しくもあったけど、日本へ帰ったすこし先の未来へ思いを馳せると、ワクワクする自分もいた。

ドロッとしたがなにかが濾過され、無色透明の水に変わったような。それは映画一本観終わったあとの余韻に近しい感情だった。

離れたくない、でも旅立ちたい。仲良くなれそうにないふたつの気持ちがお互い相反する。そんな自分の気持ちとは関係なく、タクシーはいっさい見向きもせず空港へ向かう。

だけど気持ちとは移ろいゆくもので、「空港まであと何km」という標識が目に入るたびに、深い青が淡く消えていくのを感じた。

 


 

旅と人生は似ているなと思う。どちらも自分で選択し、自らの足で歩んでいくものだ。

旅はそんな一歩一歩の感触を、直に感じることができる。自分の人生は自分自身で歩むものなんだと、思い出させてくれる。そして旅立つ前よりすこし強くなって、帰ってこれる。

もしかしたら勘違いなのかもしれない。だけど突き進んでしまえるなにかが、やっぱり旅にはあると思うのだ。

どうせならこれからも、そんな勘違いをしたまま走り続けていきたいと思った、スリランカ最後の夜であります。

【2018/7/11追記】

約15時間のフライトを経て、日本にかえってきました。ただいま、日本。

スリランカの空港までの道中、脳内に散らかった言葉が消えて無くなる前に、なんとかここに繋ぎとめておきました。旅行記、順番前後してしまってごめんなさい。

これまでの旅行記も、気長にお待ちください〜。