そこはそっと背中を押してくれる、優しさにあふれた街だった【タイ・チェンマイ】

そこはそっと背中を押してくれる、優しさにあふれた街だった【タイ・チェンマイ】

2017年11月29日

タイのチェンマイという街を知ったのは、中国に短期留学していたときのこと。同じクラスの日本の方と飲みに行ったとき、チェンマイの話を聴いたことがあった。

「バンコクより静かで、ちょっと郊外に行けば自然が満喫できてね。夏に子供を連れて家族で行くんだけど、本当に良いところだよ。佐田くんもきっと気にいると思う」

彼の楽しそうに語る姿を見て、「きっと良い街なんだろうなあ」と思った。

あれから6年が経ち、いまチェンマイにいる。

彼が今どこで何をしているのか分からないけれど、「ちゃんとチェンマイに来ましたよ!」と一言だけ伝えたかった。

彼の言った通り、いつの間にか僕はチェンマイの虜になっていた(その証拠にすでに1ヶ月もここにいる…)。なにがそんなに良いのかって聴かれると、特に「これ!」というのはないのかもしれない。

ただひとつあるとするならば、それはとても優しさにあふれた街だということ。とにかくいるだけで穏やかな気持ちになれる、そんな空間がここチェンマイにある。

行き交う人の笑顔がそう思わせるのかもしれないし、夜にひっそりと輝くオレンジ色の灯りがそんな気持ちにさせてくれるのかもしれない。

今までずっと東京の時間軸で過ごしてきたせいか、のんびりとした空気感にソワソワしてしまうことがある。常にどこかゆったりとした時間に慣れない自分がいるのだ。

たぶんこれが期限付きの旅行であれば、「あー、もうちょっと居たかったなあ。明後日から社会復帰できるかな」とか、延々と誰かに言っていたのだろう。

今ではその感情すら少し羨ましかったりする。自分の道を決めて進むのは、当たり前だけど楽じゃない。

気づけばだれかのペースに合わせて動いていた、東京の時間軸を抜け出すのはとても難しい。いや、抜け出すのは簡単なのだけれど、ただそれに慣れてしまう自分が怖いのだ。

でも、チェンマイですれ違う光景のひとつひとつが、「もう少し肩の力を抜いていいんだよ」と声をかけてくれているようで、時折ホッとした気持ちになる。

自分の気持ちをそっと吐き出しては、また前を向いて歩き始める。そんな一部始終をそっと見守ってくれているような、温かい気持ちになるチェンマイ。

これからは自分のペースで歩いていかなければならない。重い腰をあげて次の街を目指す。もしかしたらそんな呼吸を整える場所にうってつけなのが、タイ・チェンマイなのかもしれない。