どうも、佐田真人(@mst727)です。
旅をしているとごく稀に、琴線に触れるものがある。これからもそんなものと出会っていきたいと思い、旅の最中に惹かれたものたちを記録していくことにしました。
第1弾はネパール・ポカラで出会った「ノータグノーブランドのウールコート」。
コートは滅多に買い換えないので、ながく着たいと思えるものを買う。最低条件は着膨れしにくく、ロング丈で形が綺麗なもの。基本は黒色のものを探す。
そんな条件を満たし、ひと目見た瞬間こころ惹かれたコートが、ネパール・ポカラの「名前のない仕立て屋さん」にあった。
小さなベーカリーやレストランが並ぶ、湖沿いの通りを歩いていたときのこと。薄暗く人気のない小さな仕立て屋のマネキンにかかった、黒いコートが目に入った。
それはどこか日本的なテイストを感じる、美しいシルエットをしたウールコートだった。ずっと気になっていた僕に、店の奥から服を裁縫していた青年が出てきた。
「試着してみなよ」
ホコリのかぶったマネキンからコートを丁寧にとると、はやくも鏡の前にいた自分の腕に袖を通してくれた。自分にとって良い服は、羽織った瞬間、心がワクワクするものだ。
両腕に袖を通し、前のボタンを留めて鏡を見てみる。たぶん、買うだろうなと思った。
ノータグノーブランド、フリーサイズのコートは一点もの。デザインしたのは仕立て屋さん一家のおばあちゃんで、なんとずっと東京でデザインの勉強と仕事をしていたらしい。
無駄な装飾のないシルエットは、どこか日本的な感じを思わせるわけだ。
その家のおじいちゃんとおばあちゃんは東京の阿佐ヶ谷に住んでいたというから、これもなにかの縁だ(東京にいたころ阿佐ヶ谷の近くに住んでいた)。
お店からコートを着て帰った道中、もしかしたら自分はこのコートを買うためにポカラに来たんじゃないか、そんなことをふと思った。
撮影協力:古性のち(@nocci_84)