ここ数年、海外から台湾に移住する人たちが増加傾向にある。身の回りの話だと、居留証の申請に行った際に随分と待ったが、多様な人種の人たちがこれほど多く台北に住んでいるのかと思ったし、香港から台北に移住してきた人たちにも何人か会った。台湾移住の背景にはいろんな理由があれど、海外の人から見ても、台湾が魅力的なのは間違いない。
自分も台湾に移住して5年経ったが、なぜ今も台北で暮らし続けるのか。日本から距離が近く、ご飯が美味しい、カフェも多い。治安が良く安全性が高い点でも、台北は暮らしやすいと感じる。これはおそらく多くの移住者が感じる共通の点だと思うが、自分は台湾移住後の心境の変化が、居心地の良さにも直結していると感じる。
台湾移住後の心境の変化
まず、東京に住んでいた頃よりも、自然体で楽に居られるようになった。
学生の頃、初めての海外でタイのバンコクに訪れた時のこと。コンビニの店員さんがスマホを片手でいじりながら、他の人とずっと話している様子を見て、日本とのギャップを感じた。最初はちゃんと働けよと思ったが、ここまで自然体で居られる彼らが羨ましく見え、自分は他人に気を使いすぎているのかもしれないと思ったことがある。
台北に移住してからは、この堅苦しさから少し解放されたように思う。言語の関係もあるが、立場や年齢関係なく、人に気を使い過ぎることが少なくなったので、自然体で楽に居られるようになった。特に台湾に来てからは年齢関係なく、気兼ねなく話せる人が増えたのは嬉しい。
それで、これからもいろんな人たちと会っていきたいと思うようになったからか、積極的に外に出てみようと思うことが増えた。そもそも台湾は基本外食文化なので、外に出る機会が多いが、至るところで何かしらのイベントが開催されているので、実際に足を運ぶことも多い。
また、朝は朝市や朝食のお店に、夜は夜市や公園に多くの人たちが集まり、街そのものに活気を感じるので、外にいるとエネルギーをもらえる気がするのだ。暑さや雨で外出したくない日もあるが、それ以外はあまり移動にストレスを感じることがないので、気軽にどこへでも行けるフットワークの軽さが増した実感がある。
東京に住んでいた頃よりも、単純に元気になった気がする。
今も台北で暮らす理由
今も台北で暮らし続けることに、細かい理由はたくさんあれど、居心地が良いと思えることが大前提。そして居心地が良いなあと感じる理由の一つに、街との距離感がちょうど良いことが挙げられる。
物理的な距離感でいうと、台北はMRTかバスに乗るか、自転車があれば、大体行きたいところに行ける、コンパクトシティとしての魅力が詰まっている。また、山と海の距離が近く、気軽にハイキングや温泉を楽しめるし、台北駅から片道約2時間で台南や高雄など南部に行くことも可能。交通費が日本と比べて安いので、タクシーを利用しやすいのも嬉しい。総じて移動のストレスを感じにくい。
精神的な距離感でいうと、東京に住んでいた頃に感じていた移動のストレスの大半は、まわりに怒っている人やイライラしている人がいると、自分にまで負の感情が伝染してしまうことだった。また、目に入る広告の量が多く、どんどんとノイズが蓄積されていく感覚も苦手だった。台北でもゼロではないが、その類のストレスは少ない。台湾ではEQ(心の知能指数)という言葉がよく聞かれ、コミュニケーションの意識が、日本よりも根付いてるからイライラしている人が少なく見えるのかもしれない。
上述した心境の変化を含め、より前向きにいられ、条件的にも長期で暮らせる場所が、今は台北なのだと思う。この先ずっと台北にいるというよりは、あくまで一つの拠点として捉え、今後は自分に合う街をさらに探し、複数を行き来するような生活にシフトしていきたいと考えている。
自分に合う街を探す
東京に合計5年ぐらい住んでいたが、ある時を境に、東京から一度離れてみようと思った。どこかに移動する必要があると感じ、海外を放浪し、自分に合う街はどこなのか探し続けた。最終的に縁あり、今は台北にいる。
自分に合う街は今住んでいる場所だけだとは限らない。同じ日本でも他の街かもしれないし、遠く離れた海外の地かもしれない。自分に合うかどうかは、やはり行ってみないと分からない。自分もまだ行ったことのない街がたくさんあり、暮らしてみたい街もたくさんある。
例えば、高温多湿ではなく雨の少ないカラッとして天候の街に住んでみたらどうなのか、中華圏ではなく英語圏に住んでみたらどうなのかなど、今後は台北以外にも自分が暮らしたいと思う街を探すつもりである。今はそのための準備を少しずつしていきたい。
この記事は「ニュースレター」に書いた内容を転載したものになります。
