久しぶりに五感が開いた気がする。初めて訪れた「2020年台北電影節」

2020年7月26日
台湾の生活も馴染み始めた7月。「すこしずつ外に目を向けないとなあ」と思っていたとき、おなじ建物の住人から、「台北電影節(Taipei Film Festival)」のチケットを2枚もらった。映画を映画館で観るなんて久しくしてなかったし、ちょうど映画祭も気になってたので、チケットをもらえたことが嬉しかった。すこし余談をはさむ。

ぼくが台湾を好きな理由のひとつというか、つよく惹かれたのは、アートやカルチャーが盛んなところにある。もともと学生の頃に「クリエイティブに生きてる人ってどんな人だろう?」という好奇心から、クリエイターやアーティストに会いながら台湾を一周したところから、台湾という場所が好きになった。

そこから約6年の月日が流れ、いま台北で暮らしているわけだけど、その頃の記憶や憧れは今もなお、色あせない。だからこそ、今回のチケットは、自分が憧れた台湾にまた一歩踏み出すためのチケットのような気もして、ロッカーに2枚のチケットが置いてあるのを発見したときは、すこし心が弾んだ。

平日の仕事帰り、上映まであと40分


映画を観に訪れたのは、西門駅近くにある中山堂。台北映画祭の期間中は、いくつかの場所で映画が上映される。そのなかで今回訪れたのは、「中山堂」という伝統的な建物。目の前の広場では、スケボーの練習で集まる若者や、談笑する人たち、早めに到着したであろう映画祭に来た人たちが目に入った。



映画上映までまだ時間に余裕があったので、おすすめだと聞いていた近くの「上上咖啡」という喫茶店に立ち寄った。アイスクリームコーヒーを注文し、しばし仕事モードからゆっくり映画を観る気持ちへと切り替える。となりの人のミネストローネのほろりとしたお肉がとても美味しそうなので、今度はこれをいただくことにする。


カランと扉をあけて外に出ると、やんわりと明るかった空がトーンを落とし、中山堂の灯りが広場を照らしていた。折り目がつかないよう、大切にクリアファイルに入れていたチケットを取り出し、受付へと向かう。受付スタッフのひとりが、ぼくの拙い中国語を聞きとり、館内に案内してくれた。海外だと雑に扱われることが多々ある。だから、親切にされるとやっぱり嬉しい。




東京でよく行ってた映画館のような、活気のある雰囲気ではないけど、静かで落ち着いた中山堂の空間は、ぼく好みだった。館内に流れる軽快なジャズがゆっくりとフェードアウトし、ブラックアウト。数秒後に映画の予告編が始まる。「やっぱり映画はこうでなくちゃ」と目を輝かせ、スクリーンを見入る。早くもどこかで来て良かったなと思い始めていた。

夜9時半、映画の余韻にひかれながら会場を後にする。久しぶりに五感が刺激されたような、潤ったような気がした。こんなときは自宅まで歩きたくなるから不思議だ。なんとなくいま出てくる取り止めのない言葉を、iPhoneのメモに打つ。そのときの文章をいま改めてこの記事に書き残しておきたいと思った。せっかくなので、内容には触れないけど、今回観た2本の映画の感想もいっしょに書いておく。

スポンサーリンク

親愛的房客(Dear Tenant)を観た感想

日本にもゆかりのある台湾の監督の作品「親愛的房客(Dear Tenant)」。LGBTや親子愛をテーマに描かれた映画だけど、いろんな登場人物の感情が交錯し、入り乱れていく。あまり観ない映画だったけど、一つひとつのシーンが綺麗かつ新鮮で、素敵な内容の映画だった。

言語力の問題で、ストーリーの詳細までは、まだ消化しきれなかった。でもだからこそ、感覚的に音楽や情景を感じることができ、またすこし違った映画の楽しみ方ができたように思う。内容はそれなりにシリアスだったけど、上映が終わったあと、舞台挨拶で俳優陣の方たちが登場し、挨拶はもちろん、お客さんの質問にジョークを交えながら答えてる様子を見て、なんだかほっとした。

ちなみに「親愛的房客(Dear Tenant)」は、当日ワールドプレミアされた作品なので、台湾ではこの秋に公開、日本ではまだ公開未定の状態だ。ただ、日本の字幕が入った予告編がYouTubeに上がっているので、ご興味ある方はぜひ見てほしい。

スポンサーリンク

静かな雨(Silent Rain)を観た感想

もうひとつは日本映画の「静かな雨(Silent Rain)」。内容は記憶喪失ものの恋愛物語…といってしまうと途端にチープになるのだけど、なんてことない日常の美しさを改めて再認識させられた映画だった。変わりばえのない日常が淡々と進んでいく映画。だけど1日1日小さくも確かな変化がある。

とある情景や言葉がきっかけで、自分の中の思い出したくないもの、忘れようと思っていたこと、もしくはすでに忘れていたこと、そういうものがブワッと浮かび上がってきて、そのシーンに共鳴してしまう瞬間がいくつかあった。それが自分のなかで新鮮な出来事だったというか、静かな映画の良さを改めて発見できた。

海外のスクリーンで日本語の映画を観れる機会は、そう多くないことだと思う。だから、とても貴重な経験ができた。原作の本も読んでみたいと思う。気になった方は、こちらの予告動画を見てほしい。

スポンサーリンク

最後に


久しぶりに会場で映画を観て、自分の五感が開いたような気がした。その感覚がとても新鮮で、改めて自分にとって映画は栄養なんだと実感した。デバイスひとつでどこでも映画が見られる時代になったけど、やっぱり映画は映画館で見るものだなあと。

どうしても時間が取られるものだから、これまで自分が観たい映画を観るのが当たり前で、事前に口コミを見て間違いのないものを選択することが多かった。それはなにも映画に限らず、ありとあらゆるものが自分に最適化され、間違いのないものを選べるようになってしまったいま。もちろんその恩恵は存分に受けている。だけど、時折嫌気が挿してしまう瞬間もある。だからこそ今回はあえて、自分にとっての最適解から外れた選択をしてみたかった。たぶん、偶発的な出会いから新しい発見や気づきを得たかったんだと思う。

今回観た「親愛的房客」と「静かな雨」は、この映画祭に来なければ、もしかすると一生出会えなかった作品かもしれない。だからこそ、この経験自体がすごく新鮮で、とても貴重な経験になった。ここ最近、知識やスキルなどの目に見えやすい情報のインプットが多かったからこそ、感情が豊かになるような吸収も積極的にしていきたい。これからも台湾のアートやカルチャーを実感できる場所に足を運べたらと思う。

2020/7/26(日)追記

今回の台北電影節(Taipei Film Festival)の雰囲気を見てみたいという方は、YouTubeでも当日の様子をすこし撮影してみたので、ぜひ見てほしい。